単細胞はそして笑う





榛名という男は本能が全ての生き物だ。

快楽に率直に生きている。

というか、気持ち良いことに抗えない。

つまり単細胞なのだ。

彼の人生のほとんどは野球が占めている。

それは投げること=気持ち良い、だからだ。

榛名くん、カッコイイ!、なんて黄色い声をあげてる女の子たちを見かけると

あたしはいつも吹き出しそうになってしまう。

アレ、榛名のマスターベーションだよ。

そう教えてあげたくなる。

無知って恐ろしい。

けれどどんなに気持ち良くてもそれでヌケる訳がない。

アイツはそこまで変態ではない。

だから週に一度の部活休み、榛名は性欲処理に全力投球だ。

彼の人生から野球を除いた残り僅かはあたしとのセックスが占めていた。

単細胞以外の何者でもない。



1.5Lのボトルを軽々掴んで榛名がミネラルウォーターを呷る。

喉仏が見ていて気持ち良いくらい上下に動く。

ボトルから唇を離すと榛名はぷはぁーと盛大に息を吐いた。

汗ばんだ裸体がエロさを通り越して寧ろ清々しい。

その様子を見届けて、「ご満足ですか、榛名さん」と声を掛けた。

「あ? まだこれからだろ」

「……は?! それ、マジで言ってんの?」

「え、マジですけど」

休日は睡眠第一のあたしを午前中から叩き起こして1回、

冷蔵庫の余り物で作った昼食を済まして2回、榛名はした。

既に3回も事を得ている。

それでまだヤル気満々って一体どういうことなんだ。

「あの、3回ヌいてもまだ溜まってるんですか?」

「俺、若いから」

いつもは3回もすれば満足して寝るだろーが。

まぁ、起きてから夕飯前に1回するけど。

「つーか、とのセックスまじ気持ち良いから一日中ヤってられる」

「いや、アンタの馬鹿みたいな体力に付き合ってたらあたし死ぬから」

「ちっ、しょーがねーなぁ」

そう言ってベッドの背に凭れると榛名は転がっていた雑誌を拾ってパラパラと眺め始めた。

なんとなく不服だ。

榛名は榛名のままで良い。

着たばかりのTシャツを脱ぎ捨てて榛名に跨がる。

「なに、誘ってんの?」

「榛名、したいんでしょ? しよ」

「……俺、お前のそういうところ好き」

そう言って胸元に唇を落としてくる。

「キスマーク付けたら殺す」

「やだね」

「んっ!」

甘い痛みに思わず声を上げる。

視線を落とすと柔肌が鬱血してぽっかりと紅が浮かんでいた。

「俺のもんは俺の自由にする」

にんまりと笑う榛名は無邪気な子供みたいだ。

「もう好きにして下さい」

お手上げ、ってやると榛名は忍び笑いをしてまたあたしを押し倒した。

コイツは快楽に抗える男ではないのだ。

それで良い。

それがあたしの好きになった男だもの。

「俺、早くプロになって、娶って、したいだけする生活してぇ」

「アンタ最初から禁欲なんてしてないじゃん」

「まだ足りねぇ」

ほとんど野球に捧げた人生のなか、その隙間に全力投球であたしとセックスする榛名。

そんな単細胞を愛しいと想ってしまうあたしもまた、単細胞だろうか?

「じゃあ、さっさとプロになってあたしを榛名にしなさいよ」

単細胞はそして笑うのだ。



























































SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送