I wish . . .





 毎日願ってる。

 あなたが死んでくれることを。



 この部屋の天井は限りなく白く、視界に入っても何の面白味も無い。

 それでも初めてこの映像を捉えたときは涙が出る程嬉しかったのも事実だ。

 いつのまにか見慣れてしまったけれど。

 ごろんと寝返って左を向き、視点を彷徨わせた。

 金持ちらしく何でも揃った部屋だな、と改めて思う。

 不意にパソコンが眼に入った。

 上体を起こし、シャツを羽織ってベッドから下り立つ。

 素足で歩くと皮膚が大理石の床に吸い付く感覚がして、離れる度に湿ったような音がした。

 パソコンの前に座り込み、それを起動させる。

 スタンバイになっていたらしく、既にデスクトップが表示された。

 あまり機械に強い方では無いけれど、まぁ、インターネットくらい出来る。



 「何やってんだよ?」

 シャワールームのドアが開く音、そして景吾の声。

 「見れば分かるでしょ?」

 背後に気配。

 温かな腕が回される。

 シャワーを浴びたばかりの景吾の肌は溶けるように私の肌に馴染んでいく。

 「裸でインターネット?」

 景吾の手からミネラルウォーターのボトルを奪い取って一口含むと

 ちょうど良い冷たさで乾いた喉を潤した。

 「そんな格好してると誘ってると見なして襲うぞ?」

 「さっき襲ったばっかりじゃない」

 景吾が珍しく楽しそうに笑った。

 「で、何調べてんだよ」

 「正しい人の殺し方」

 「アーン? 誰か殺したい奴でもいるのかよ?」

 「いるわよ。今、私のすぐ真後ろにいる男」

 「……さっきまで俺に抱かれてあんなに良がってたクセに。

  俺が死んで困るのはそっちだろ?」

 「死にたくないならアンタが私を殺せば済むことよ」

 「が死んだら俺様が困るんだよ」

 「なにそれ? 私が死んでも代わりなら幾らだって……」

 「いねぇよ」

 怒りが込み上げてきて、腕を振り払って席を立った。

 本当は、その言葉を信じて夢見ていられればどんなに良いだろうと思う。

 けれどここで信じてしまったら私はその程度の女に成り下がってしまう。

 そんなのは嫌だ。

 「ねぇ、甘い言葉を並べて私までその辺の女と同じ扱いするつもり? 馬鹿にしないで」

 ベッドに腰掛けて脚を組み、景吾を睨み付けた。

 でも景吾は怯むことなく、真剣にこちらを見つめてきたものだから

 私の方が怯んでしまいそうだった。

 「女なら幾らでもいるけどの代わりになる女はどこを探してもいない」

 そう言って景吾は私の傍に寄り、触れるだけの口付けを繰り返した。

 宥めるようなキスだった。

 「っ、やめてよ!」

 「俺は宣告したぜ? そんな格好してると襲うって」

 その言葉に逃げ出そうとしたときには既にスプリングマットと景吾のあいだ。

 男の力で組み敷かれていて、私には選択肢なんてない。

 「そんな下らないこと考える余裕があるならもっと俺のこと考えてろよ。

  がいねぇと困るって言ってんだろ?

  俺の言葉が信じらんねぇなんて、俺は許さねぇ」

 どうしてこんな男に私は抜け出せないくらい嵌まっているのだろう。

 景吾を睨み付けながら思う。

 けれどどんなに欲しくても、この男はあたしのものになりはしないのだ。

 だから最初から諦めていようというのに、その決意すら甘い言葉で溶かそうとする。

 なんて酷い男。

 苦しくて、苦しくて、

 今すぐにでも景吾を殺した方がずっと楽だろうという考えに至るのも無理ないではないか。

 それでも――

 「許してくれなくても結構よ」

 「お前、素直じゃねぇなぁ」



 「そんなに苦しいなら俺を殺してみろよ」



 殺せる筈のない私は毎日願ってる。

 あなたが死んでくれることを。



























































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