like a cry





 どうして男同士でセックス出来るんだ?、と思うことがある。

 こうして跡部に抱かれている最中に。

 だってそうじゃないか。

 異性間で行われる生殖行為あるいは快楽行為がセックスだ。

 同性愛者でもないのに同性に欲情するなんて可笑しいじゃないか。

 おい、跡部、どうして男同士でセックス出来るんだよ?



 「おい、気持ち良くねぇのか?」

 突然一時停止して、跡部が尋ねてくる。

 「下らない質問するなよ。こんなに喘いでて気持ち良くない訳ないだろ?」

 「だったら集中しろ」

 「屋上でセックスに集中? 馬鹿みたいだ」

 「馬鹿になれよ」

 「じゃあ馬鹿にしてみろよ」

 俺の挑発に簡単に乗せられて、跡部は再び腰を動かし出す。

 俺もまた女みたいな声を洩らす。

 どうしてセックス出来るんだ、だなんてそれこそ自分に問うた方が良い。

 跡部なんてろくに話してことさえない相手なのになんでこんなことになってるんだ?

 勿論、最初は抵抗した。

 全く意味が分からなかったし、それでも自然と嫌悪感が沸いて、必死で抵抗した。

 けれど、跡部はいとも簡単に俺を犯したのだ。

 俺の抵抗は跡部の前では無意味同然だった。

 そしてそんななけなしの抵抗さえ回を重ねるごとに少しずつ薄れていった。

 別にどうでも良くなったとかいう訳じゃない。

 快楽に溺れた訳でもない。

 自分でもそれがなぜなのかは分からない。

 ただ、俺は跡部に求められるがままに身体を預けている。

 自分が何を思っているのか、跡部が何を考えているのか、

 セックスしたところで何も分からない。



 「っ!」

 跡部が果て、連鎖的に俺も尽きる。

 こうして簡単に吐き出せれば良いのに、と思う。

 初めて跡部とセックスしたあと、俺は放心していた。

 嫌悪感とか痛みとか屈辱感とか羞恥心とか怒りとか恐怖とか倦怠感とか、

 たくさんの色を混ぜ合わせれば黒になるのと同じで、

 俺の心はたくさんの感情がごちゃまぜになって淀んでいた。

 『何が欲しいんだ?、お前』

 そのとき唯一絞り出せた言葉。

 そう投げ掛けた俺に、跡部は何も答えなかった。

 一瞬、泣きそうな顔をしただけ。

 跡部が泣こうが喚こうが俺の知ったことじゃない、と思う。

 それなのに、俺はそれ以来、肝心なことは何も尋ねられなくなってしまった。

 「跡部、重いから早くどけ」

 フェンスを掴んだ俺の手に自分の手を重ね、俺に身体を預けたまま動かない跡部。

 さすがにテニス部レギュラーなだけあってか、息はとっくに整っている。

 なら、コイツは何をしているんだろう?

 セックスはもう済んだんだからさっさと離れれば良いのに。

 「おい、跡部?」

 「、さっき何考えてた?」

 「なんだ、それ」

 「さっきだけじゃない。お前、いつも最中何か考えてるだろ?」

 「別に」

 「教えろ」

 「関係ないだろ」

 「言え」

 「……」

 沈黙で拒否を示してみたものの、跡部は同じく沈黙でそれに対抗した。

 コイツはときどき小さい子供みたいにごねてみせる。

 俺は諦めるしかない。

 「どうして男同士でセックス出来るんだ?、って考えてたんだよ。

  異性同士でする筈のことを俺とお前はしてる。全然理解出来ない」

 「……なぁ、。俺が嫌いか?」

 「は? どうしてそういう話になるんだよ」

 「どうなんだよ」

 「……なんなんだよ」

 なんなんだよ、コイツは。

 なんで声が、身体が、震えてるんだよ。

 俺は溜息を吐く。

 「……嫌いじゃない」

 跡部が顔を埋めていたシャツの肩口がほんの少しだけ湿るのを感じた。

 「俺はお前に嫌われたいくらいだ」

 背中から重力と温もりが離れる。

 意味不明の言葉と一緒に俺は残された。

 「ふざけるな」

 言葉を吐き捨てる。

 後処理もしていないそのままの身体を、気怠さに任せてアスファルトに横たえた。

 嫌われたい、だなんて。

 意味を量りかねる。

 アイツは何がしたいんだよ?

 何が欲しいんだよ?

 どうして男同士でセックス出来るんだよ?



 「そんなに欲しいなら全部くれてやるから泣きそうになってるんじゃねぇよ」



 なんだかもう、跡部が泣きそうなのか自分が泣きそうな分からなくなった。



























































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